リハビリテーション部
部門の特徴
リハビリテーション部では主に脳卒中をはじめとする脳血管疾患等のリハビリテーション、整形外科の人工関節や大腿骨頸部骨折等骨折後、脊椎疾患等の運動器リハビリテーション、また循環器疾患では心筋梗塞や心不全等の心大血管疾患リハビリテーションを行っています。
今は発症直後からリハビリを開始する「急性期リハビリ」という考え方が主流になっています。
病気やケガの影響に加え、ベッドで寝たきりの状態が続くと関節拘縮、筋力低下、心肺機能低下、認知機能の低下、誤嚥性肺炎を起こし易くなる等、「廃用症候群」といわれる様々な症状を引き起こします。これによって高齢の方は歩行が困難になるだけではなく、食事や座位も出来なくなってしまう可能性もあり、元の生活に戻ることが難しくなってしまいます。
当院では15名の理学療法士、4名の作業療法士、4名の言語聴覚士が勤務し、急性期リハビリを効率的に取り入れ、以前の生活に近い環境を取り戻す事に繋がるきっかけ作りに努めています。
理学療法
理学療法では病気やケガによる機能低下や障害に対して、まず寝返る・起き上がる・座る・立つ・歩く といった基本動作が行えるように身体機能の回復をサポートしています。
発症直後、手術後の急性期からICU(集中治療室)やベッドサイドで早期の離床を進めています。主な対象疾患としては、脳卒中をはじめとする脳血管疾患等のリハビリ、整形外科の人工関節や大腿骨頚部骨折、脊椎疾患等の運動器リハビリ、また循環器科では心筋梗塞や心不全等の心大血管リハビリを実施しています。
脳血管疾患の理学療法
最初にベッドサイドで行われるのは、関節拘縮の予防と褥創予防に努めます。そのためにはベッド上での四肢関節運動やストレッチ、他動的な体位変換、良肢位を保つためのポジショニングや適切なマットの使用を行います。次に離床に向けて坐位練習を開始します。呼吸・血圧・脈拍等をチェックしながら実施します。まずはベッド上で背もたれ坐位を取らせ、体幹の安定性があれば、介助で端坐位を取ります。またベッドサイドでの坐位バランス練習を行います。ある程度坐位が安定すればベッドから車椅子への移乗練習を行い、リハビリテーション室での運動へと進めます。
リハビリテーション室での運動としては、マット動作練習として、横への移動、寝返り、起き上がり等の練習を行います。坐位バランス練習として動的坐位バランス練習を行い、坐位での活動を高めるようにします。移乗動作練習、健側下肢・体幹の筋力増強練習等を行います。また車椅子駆動練習として麻痺があっても健側の手・足を用いて自己駆動する練習を行います。脳血管障害患者では、痙性によって動的姿勢コントロールが障害されるため、運動により正常な感覚を与える事で筋緊張と運動をコントロールする事も行います。体幹や下肢の支持性がしっかりしてくれば立位練習や立位バランス練習を歩行の前段階として行います。歩行練習では必要があれば下肢装具を装着して平行棒や杖を使用して行います。
運動器疾患の理学療法
「運動器」とは骨・関節・筋肉・神経などの身体を支えたり、動かしたりする組織・器官の総称で理学療法の対象疾患としては大腿骨頚部骨折等の下肢の骨折、変形性関節症による人工関節、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、脊椎圧迫骨折等があります。手術を必要とした場合は出来る限り早期からリハビリテーションを開始します。運動器疾患のリハビリテーションは低下した筋力や関節可動域の改善を図り、立ち上がりや歩行、階段昇降等の日常生活動作の獲得や障害された機能を回復し社会活動が出来るようにしていきます。
心大血管疾患の理学療法
糖尿病教室での運動指導
明石海峡大橋を臨める屋外リハビリスペース
作業療法
当院では病気やけがの直後から開始しています。自宅での生活に必要な日常生活動作(食事、整容、トイレ、入浴、更衣など)訓練、上肢機能訓練、高次脳機能訓練などを行っています。少しでも自分の力で暮らせるように、様々な作業活動を通じて身体活動や精神活動の向上を図ります。 主な疾患としては、脳血管疾患(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血など)、整形外科疾患(骨折など)、廃用症候群です。
作業って?
作業療法士協会ホームページより
脳血管疾患の作業療法
当院では入院当日または翌日から開始します。十分なリスク管理を行いながら早期から介入することで安静状態から意識レベルの改善や早期離床、関節拘縮やせん妄・不安等の精神心理面の二次的合併症の予防を行います。
上肢機能障害に対しては運動促通や課題志向型練習、両手の協調性練習などを行い日常生活の獲得にむけた具体的な動作の練習を行います。
高次脳機能障害に対しては動作の反復練習や記憶訓練、病態の認識、代償手段の獲得、環境調整を行い社会生活がより快適におくれるように支援していきます。
高次脳機能障害とは?
脳損傷により注意を払ったり、記憶・思考・判断を行ったりする機能を失ってしまう、うまく意図した動作が行えない(失行症)、対象を認識できない(失認症)、うまく話せない(失語症)という障害です。これらは手足に麻痺が無くても忘れ物や落ち着きのなさ、怒りやすさ、動作の遅さ、手順の悪さなど日常生活に支障をきたす原因となります。
整形外科疾患の作業療法
当院では上肢の骨折、腱損傷、神経麻痺に対して関節可動域練習、筋力強化練習を行っています。必要に応じてスプリントの作成も行います。
廃用症候群の作業療法
廃用症候群とは、過度に安静にすることや活動性が低下したことによる身体や精神に生じた様々な状態を指します。
作業療法ではできるだけ寝た状態が続かないように、座る時間を増やしたり、手足の運動をしたり、レクリエーション活動や趣味的活動を行います。
言語聴覚療法
言語聴覚療法では、主に急性期の成人の方を対象に、コミュニケーションに問題がある方や、生活の基本となる食べること=摂食・嚥下機能が低下した方に対して専門的にアプローチします。
高次脳機能障害のリハビリ
高次脳機能障害には、注意の保持ができない、注意を複数方向に同時に向けることができないなどの注意障害、記憶障害、「言葉が伝えにくい」「聴いたことが理解しにくくなる」「字が書けない」「計算ができない」などの失語症をはじめ、運動可能で行うべき動作や行為を理解しているにもかかわらず目的の運動ができない失行、視覚障害・意識障害などがないにも関わらず対象の認知が障害される失認などがあります。評価の上、低下した機能への反復アプローチ・代償手段の獲得の援助・環境調整などを行います。
運動性構音障害のリハビリ
口・舌の麻痺が出ることによる「呂律が回らない」「声が出にくい」などの症状を構運動性構音障害と言います。評価の上、構音器官(舌・頬・口唇・口蓋)個々の運動性改善練習、表出困難な音をターゲットとした音~長文レベルでの構音訓練などを行います。
摂食嚥下障害
「食物を認識できない」「食事が口に中に溜まりなかなかのどに送れない」「食事が飲み込みにくい」「水でむせる」等の症状を摂食嚥下障害といいます。
ベッドサイドでの嚥下スクリーニング検査、嚥下造影検査(後述)等の評価の上、訓練計画を立案します。
食物を使用しない間接嚥下訓練では、嚥下関連反射の惹起強化・嚥下関連筋の拘縮予防と筋力強化練習、喀痰や異物喀出練習をはじめとした呼吸練習を行い、食物を使用する直接嚥下訓練では、安全に食べられる形態や姿勢の検討を行いつつ、訓練を進めます。
嚥下造影検査(VF検査)について
当院では改訂水飲みテスト(MWST)や唾液嚥下テスト(RSST)などの摂食嚥下スクリーニングを元に、食事の際にムセが多い・うまく飲み込めない等、飲み込みに問題のある患者様に対して、嚥下造影検査(VF検査)を行っています。実際の検査で は、X線透視下でバリウムの入った検査食を食べて頂きます。
検査の目的には主に①誤嚥の有無・ムセの有無・程度を含めた原因の評価
②検査結果で得られた情報を元に、安全に摂取する為の姿勢・食形態・摂取方法(介助・自力摂取ともに)について検討する
の以上2点があげられます。
検査時には、医師・看護師・言語聴覚士が立ちあい、その場で検査内容について検討を行います。
検査結果を元に、食事回数・姿勢・摂取方法・食形態を設定し、お食事を安全に楽しんでいただくためのお手伝いをしていきます。
嚥下造影検査(VF検査)の例
当院では、2020年に最新型のswallow chairⅡ(東明ブレース)を購入し、摂食嚥下訓練・嚥下造影に積極的に取り組んでいます。
側臥位や仰臥位に自由に体位変換可能で、体幹角度も目盛りで確認しながら調整可能です。
NST〈栄養サポートチーム〉への参加
STはその専門性を生かし、NST内の摂食・嚥下チーム、経腸栄養チームに参加し、活動しています。