下部消化管

外科

下部消化管

当院にては下部消化管手術として大腸癌を中心に痔核・痔ろうなどの肛門疾患、虫垂炎・消化管穿孔などの急性炎症性疾患など、幅広く手がけており、最新の知見や技術による治療成績の向上を目指して取り組んでおります。

大腸癌には、様々な治療法があります。
通常、手術が最も根治的な治療法となりますが、大腸癌のできた場所や進み具合、転移の程度など、病状を十分にご説明、ご相談した上で最適な治療方針を決定しております。
大腸がんの具体的な治療法としては 内視鏡的治療、手術化学療法(抗がん剤)4) 緩和療法などがあります。

内視鏡的治療

大腸癌治療のガイドラインに従い、良性のポリープ(腺種)や早期大腸癌は開腹せずに大腸ファイバーを用いて切除術を行っています。切除した病変には改めて詳しい顕微鏡検査(病理組織検査)を行い、リンパ節転移の可能性があると判断された場合には、腹腔鏡を用いた追加切除の適応となります。

手術

十分な術前評価を行った上で、積極的な切除を行っております。手術内容にもよりますが、通常は2週間前後での退院が可能です。

直腸がん手術では自律神経の温存に心がけ、術後の排尿、性機能障害を起こさないように留意しております。可能な限り、肛門は温存するようにしておりますが、やむを得ず人工肛門(ストーマ)造設となった場合は術後も専任看護師によるストーマ外来を設けており、長期にわたってきめ細かいフォローアップを行っております。

さらに再発がんに対しても十分な評価のうえ、切除による根治の可能性があれば積極的な手術を行っております。

化学療法

近年、抗がん剤を用いた化学療法は非常に進歩しており、従来、切除不能であった進行癌症例であっても抗がん剤を投与することで(術前化学療法)、切除可能になる場合もあります。当院では根治手術が不可能な場合、術後に再発を来たした場合、術後再発が懸念される場合など、最新の知見に基づいて積極的な集学的治療を外来中心に行っております。

緩和療法

残念なことですが、様々な治療を行ったとしても十分な効果が得られない、あるいは得られなくなった場合もあります。

そのような場合、可能な限り長期間、疾病による苦痛のない快適な生活を送っていただけることを治療の主眼におくこととなり、これを緩和医療(緩和ケア)といいます。

当院においては在宅医療も含め、終末期まで一貫したフォローを行っており、急変時にももちろん対応させていただいております。

大腸癌とは

大腸癌は年々増加の傾向にあり、日本人にもっとも多い癌の一つです。食生活の欧米化などによりさらに増加していくことが予測されています。

発生のメカニズムについてはまだよく分かっておりませんが、良性のポリープ(腺腫)から癌が発生することが多いのが特徴となっております。

大腸癌の症状

大腸癌の症状は癌の発生部位により異なります。
比較的肛門に近いS状結腸~直腸癌では、血便、便が細くなる、残便感、下痢と便秘を繰り返す、腹痛などの症状を認めます。一方、肛門から離れた盲腸癌や上行結腸癌では、便は液状であるため、大きくなるまで症状が出にくく、慢性的な出血による貧血症状や腫瘤触知でみつかることもあります。
ただ、症状が出るのは、ある程度進行した例であり、早期大腸癌の場合、ほとんど症状はありません。

大腸がんの診断方法

便潜血反応 便の中に混じった血液が混じっているかを調べます。検診で多く行われているもので、痔核などの良性疾患でも陽性となります。陽性であれば大腸内視鏡検査や注腸造影検査といった精査の対象となります。
注腸造影検査 肛門からバリウムを大腸内に注入して大腸内の病変の有無を調べます。癌の正確な位置や大きさを評価したり,周囲の臓器との位置関係を把握します。
大腸内視鏡検査 大腸内に内視鏡を入れてポリープや癌を直接観察します。癌の疑いのある病変から細胞を採取し,診断することができ、ポリープや早期癌を切除することもできます。
腫瘍マーカー CEAとCA19-9が一般的ですが、血液検査で癌を診断する方法です。これだけで癌を診断することはできません。また早期癌で上昇することは少ない上、進行癌であっても陰性のことも多く、転移・再発の指標や治療効果の判定のために補助的に用います。
画像診断
(CT
、MRI、超音波検査、など)
大腸癌の進行度(進み具合)、つまりリンパ節・肝臓・肺・腹膜などに転移があるかどうか、他の臓器に浸潤しているかどうかにより、治療方法が異なってきます。これらの検査結果に基づいて、正確な進行度を把握し適切な治療方針を立てていきます。

進行度(進み具合)

大腸癌の進行度は、深達度(大腸壁内での癌の深さ)、リンパ節転移の程度、遠隔転移(肝臓、肺、腹膜などへの転移)の有無により決まります。

深達度

大腸の壁は層構造となっており、内側から順に粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜により構成されています。癌は一番内側の粘膜から発生し、次第に深く入り込みます。
一般に粘膜内にとどまる早期の大腸癌は転移の危険性がほとんどないため、内視鏡的切除にて完治させることが可能です。一方、粘膜を越えて癌が浸潤すると転移の可能性があるため、定型的な手術が必要となります。

転移

癌が粘膜を越えて浸潤すると、大腸壁内のリンパ管、静脈に癌細胞が流入し、転移を起こす可能性が出てきます。

リンパ管に侵入した癌細胞は,途中のリンパ節に流れ着いて転移リンパ節を形成します(リンパ行性転移)。静脈に乗って流れていくと他臓器への血行性転移を起こしますが、特に肝臓への転移が多いのが特徴となっています。
進行度(ステージ)

深達度と転移の程度によって進行度は0、I、II、IIIa、IIIb、IVの6段階に分類され、ステージ 0 は最も早期で,ステージIVは癌が最も進行した状態です。
治療前に癌のステージを正しく判定し、これに基づいて治療方針を決定していきます。

治療法

大腸癌の治療方法は進行度によって異なります。主な治療方法として、内視鏡的治療 手術、化学療法(抗癌剤)があります。

内視鏡的治療(内視鏡的粘膜切除)

大腸内視鏡を用いて大腸のポリープや癌を切除するのが内視鏡治療です。代表的な方法には,ポリペクトミーと内視鏡的粘膜切除術(EMR)があります。

粘膜内にとどまる早期の大腸癌は転移の可能性がほとんど無く、内視鏡的切除にて根治させることが可能です。我々は一括切除できる早期大腸がんには積極的 に内視鏡的切除を行っていますが、大きさや性状によっては手術で切除したほうが良い場合もあります。

また、内視鏡的切除の後、病理組織検査で予想以上に進んでいる場合には、手術によって追加切除が必要となることもあります。

一方、粘膜を越えて広がる場合は外科的切除が最も有効で根治的な治療法となります。

手術療法

手術では,癌のある腸管と周辺の所属リンパ節を併せて切除(リンパ節郭清)し、腸管をつなぎなおします(吻合)。

腸管を切除する範囲は癌の占拠部位と手術前の検査で予測したステージにより決定します。
代表的な術式として結腸右半切除術,横行結腸切除術,結腸左半切除術,S 状結腸切除術、(低位)前方切除術などがあります。

肛門は可能な限り温存するように努めておりますが、癌が肛門に非常に近接している直腸癌の場合、やむをえず、肛門も一緒に切除して人工肛門にならざるを得ない場合もあります(直腸切断術)。ただ、早期であればリンパ節郭清を行わず肛門から切除する方法(経肛門的切除など)もあり、病気の状態に合わせて術式を選択します。

腹腔鏡手術

腹腔鏡手術とは炭酸ガスで腹部を膨らませて(気腹),腹腔内に挿入した内視鏡(腹腔鏡)で観察しながら,数箇所に直径5~12mmの小さな創(ポート)から器具(鉗子)を入れて行う手術です。
傷が小さいため手術後の痛みが少なく,回復が早いこと、術中の出血量が少ないといった利点があります。
現在、大腸癌・直腸癌に対しては腹腔鏡下手術を第1選択としています。
ただし、他臓器浸潤のある症例、転移巣の同時切除を施行する場合は開腹術を選択します。
また以前の手術による癒着が高度な場合は鏡下手術が困難となる場合もあります。

進行癌、再発癌手術

大腸癌は肝臓や肺に転移しやすく、手術前に既に明らかな転移を伴っている場合や、術後の経過観察中に転移、再発が確認される場合がしばしばあります。
大腸癌以外の癌では転移・再発を来たした場合に手術を行うことは稀ですが、大腸癌の場合には再発に対しても、手術で根治が期待できる場合があります。当院においては肝臓や肺に転移を認めても、切除可能であれば積極的に切除し、根治を目指しています。
また局所的に非常に進行しており、根治切除が困難な場合には、術前に化学療法(FOLFOX/FOLFIRI療法)を行い、腫瘍の進行度を下げたうえで、可能であれば根治手術を行います。

人工肛門管理

肛門は可能な限り温存するように努めておりますが、やむをえず、人工肛門(ストーマ)とせざるを得ない場合もあります。しかし、人工肛門の管理は非常に進歩しています。
当院においては、術後の指導はもちろん、専門看護師によるストーマ外来も行っており、退院後も適切で長期的な管理指導を行っております。

化学療法(抗癌剤)

手術が大腸癌治療の主役であり、最も効果的な方法ですが、それを補完する目的で化学療法も積極的に行っております。化学療法は近年、非常に進歩しておりますが、今のところ、抗がん剤のみでの癌の根治は極めて困難です。

化学療法は、術後の再発予防のために行う場合と、根治手術が不可能な場合に手術可能な状態にする、あるいは腫瘍の進行を抑えるのを目的に行う場合があります。

抗がん剤の投与方法としては、1)内服2)点滴3)肝動脈注射の3種類があります。

内服加療は主に再発予防に用います。進行癌の場合、根治手術が可能であっても実際は術後再発を起こす場合がしばしばあります。これは手術時には分からなかった微細な転移巣が大きくなり、検査にひっかかる様になったためです。これを予防するために、進行がんの場合は術後、一定の期間、抗がん剤を服用していただきます(術後補助化学療法)。具体的な薬剤としては主にユーエフティー(これにロイコボリンを加えて治療効果を高めます)、ゼローダなどを用いており、5週間あるいは3週間に一度、通院していただきます。

一方、点滴の抗がん剤は主に再発の高危険群、再発症例、手術不能例(術前化学療法)に対して行っております。内服投与に比べて副作用も問題となってきますが、治療効果も高くなっております。FOLFOX(エルプラット+5-FU+アイソボリン)、FOLFIRI(カンプト+5-FU+アイソボリン)という方法が一般的であり、2日間にわたる投与を外来で2週間に一度行います。適応により分子標的治療薬(抗VEGF、抗EGFR)を組み合わせて治療します。

また、治療の対象が肝転移に限局している場合には肝動脈(肝臓へ血液を送る血管)から抗癌剤(5-FU)を注入する治療(肝動注化学療法)もあります。

いずれにしても、病状を正確に把握し、最適な方法を選択するように心がけております。

緩和医療

根治手術を行ったとしても、手術時には分からなかった微細な転移巣が残存していた場合、術後再発を起こすことになります。そのため、術後5年間は定期的な外来通院と検査が必要となります。術後の経過観察中に再発が確認された場合、再手術や化学療法を行うことになります。しかし、残念なことですが、集学的な治療を行ったとしても十分な効果が得られない、あるいは得られなくなったケースも存在するのが、現実です。

そのような場合、疾病による苦痛をなくし、可能な限り長期間、良好なquality of life(QOL)を維持することを治療の主眼におくこととなり、これを緩和医療(緩和ケア)といいます。
当院においては在宅医療も含め、終末期まで一貫したフォローを行っております。