胃がん

外科

胃がん

※図は、胃がん治療ガイドラインの解説(日本胃癌学会編)より引用し、再編したものです。

はじめに

胃癌は、欧米人に比較して日本人における発生頻度が高い疾患の一つです。 日本では胃癌による死者数は49,535人(男32,142人、女17,393人)で、男性では肺癌に次いで第2位、女性では大腸癌に次いで第2位でした。(2003年)

症状は、一般に腫瘍が大きくなってきた場合にあらわれ、上腹部の不快感、胸焼け、膨満感、食欲減退、体重減少、貧血に伴う易疲労感、下血(タール便)、吐血などの症状があります。胃癌を早期で発見されている方の多くは、無症状であり、検診や人間ドックで発見されています。早期に発見して早期に治療するほど、助かる率が高まります。

5年生存率は、定型手術施行症例において、胃癌全体で73.7%、 StageIAで93.4%、StageIBで87.0%、StageIIで68.3%、StageIIIAで50.1%、StageIIIBで30.8%、StageIVでは16.6%です。(日本胃癌学会全国登録4494例の統計)

当院では、経鼻内視鏡による検診が可能です。経鼻内視鏡は、極細径の内視鏡を用い、従来の経口内視鏡に比べ、嘔吐感や息苦しさなどの苦痛が少なく、検査中に会話することも可能なため、患者さんに好評です。

胃癌は日本人に多い病気なので、毎年検診を受けることが望ましいのです。

胃癌の進行形式

リンパ行性転移

リンパ液の流れに沿って癌がリンパ節に転移します。

血行性転移

血流に沿って癌が他臓器へ転移します。肝転移が多いです。

浸潤

癌が胃壁の最も外側にあたる漿膜層を越え、膵臓、肝臓などへ直接浸潤します。

播種性転移

腹膜や胸膜へ転移します。腹膜転移は、胃壁の最も外側にあたる漿膜層を越えた癌が腹腔内にばらまかれることにより、小腸、大腸、膀胱、腹膜に発生します。癌性腹膜炎ともいい、腹水貯留や腸閉塞をおこします。

検査

胃X線検査 造影剤と発泡剤を飲んで、病変を検出します。病変の範囲などをみる検査です。
胃内視鏡検査 細長いフアイバースコープを飲み、胃内の病変を直接観察するとともに、組織を採取し、顕微鏡で癌細胞の有無や種類を確認します。当院では、経鼻内視鏡による検診が可能です。経鼻内視鏡は、極細径の内視鏡を用い、従来の経口内視鏡に比べ、嘔吐感や息苦しさなどの苦痛が少なく、検査中に会話することも可能なため、患者様に好評です。
CT検査 身体を数mm間隔で輪切りにした像を描き出します。転移の有無や、腫瘍の広がり、他臓器への浸潤の有無などを調べます。通常、造影剤を点滴でいれてから撮影します。 当院では、最新の64列MDCT(multi-detector-row CT.マルチスライスCT)を導入することで、高速、高分解能でスキャンでき、高画質の3D画像も作製可能となりました。
その他 血液検査、超音波検査、心電図など

発癌を予防するのは難しく、今の医学でできることは、早期発見,早期治療です。早期に発見して早期に治療するほど、助かる率が高まります。胃癌を早期で発見されている方の多くは、無症状であり、検診や人間ドックで発見されています。

治療

胃癌は、胃壁の最も内側の粘膜(食物と接する場所)より発生します。粘膜より、胃壁の外に向かって粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜と広がっていくと、進行度が進み、生命予後が悪くなっています。

治療方針は、腫瘍の大きさ・部位・拡がり、病期、全身状態、患者様やご家族のご希望など様々な要素をふまえて決定します。

早期胃癌で、内視鏡的粘膜切除術 (EMR = Endoscopic Mucosal Resection)の適応のある症例の場合、内視鏡的に切除します。

内視鏡的粘膜切除術の適応に入らない早期胃癌の場合、縮小手術を行います。症例によっては定型手術の適応になることもあります。

進行胃癌の場合、定型手術または拡大手術を行います。手術所見、切除標本の病理診断の結果により、ご説明した上で術後に化学療法を行う場合があります。高度進行胃癌の場合、術前化学療法 (Neoadjuvant Chemotherapy) を行い、より根治性の高い手術を行うことを目指します。

切除不能の高度進行癌、あるいは再発例の場合、化学療法で癌の進行を遅らせながら、できるだけ生活の質(QOL=Quality of Life)を保てるような緩和医療を、患者さんあるいはご家族とご相談の上で、一人一人の状況を考えて、副作用が起こりにくい工夫をしながら治療を行います。

手術について

胃癌の手術で、胃を部分的に切除したり、胃を全摘した場合に、食事や消化液が流れるように消化管をつなぐことを、再建といいます。

幽門側胃切除(胃の出口の方 2/3を切除)の場合は、Billroth I 法(胃と十二指腸をつなぐ)が主な再建法で、症例によっては、幽門側胃切除でRoux-Y再建を行います。胃全摘の場合は、Roux-Y法が主な再建法です。

胃癌治療で用いる主な抗癌剤
  • TS-1:経口の抗癌剤
  • 5-FU (Fluorouracil)
  • シスプラチン (Cisplatin CDDP)
  • カンプト (irinotecan CPT-11)
  • タキソール (Paclitaxel Taxol)
  • タキソテール (Docetaxel Taxotere)

初回投与は入院で行い、副作用などを確認し、その後は外来通院で治療できます。

胃切除後の食生活

手術後の数日は点滴で栄養をとり、徐々に、液体、粥食、固形物の順に食事をとれるようになります。一度に沢山食べると、食物や飲料が小腸に急激に流れ込むために、腹痛、嘔気、下痢、めまいなどを起こす場合があります(ダンピング症候群(Dumping syndrome))。1回あたりの食事の量を減らし、食事の回数を増やすことで改善します。また、胃を切除したことにより、小腸内の胆汁が逆流する場合があります。必要に応じて薬を処方したりします。

退院後について

退院してからは、定期的に外来通院していただきます。外来通院の目的の一つは、できるだけ早期に再発を発見することです。術後2年以内の再発が多いため、2年までは間隔を短くし(3~4ヶ月に1回)、3年以降は間隔を延ばして(4~6ヶ月に1回)行っています。(ただし、外来化学療法施行の場合は、効果判定や副作用の確認のため、受診回数は増えます。)5年以降は、毎年基本検診、職場検診や人間ドックを受けていただきます。